鋼材

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平面研磨済み鋼材(右側) と黒皮付き(酸化皮膜付き)鋼材(左側)

 

刃物に使われる鋼(はがね)には色々な種類がありますが、現在ナイフ作りに最も多く使われている材料がマルテンサイト系ステンレスの鋼材です。一番の利点は錆びにくく、手入れが容易ということですが、同時に粘り強さもあり非常に丈夫な性質を持っているため、アウトドアで使うことが多いナイフに使われる理由となっています。

製作過程においても、鍛造する必要がなくストック&リムーバル法(削り出し法)で作業ができ、また熱処理による熱変形が非常に少ないため焼き反りや曲がり等の事故の可能性が低くなりますので、扱いやすい材料です。

しかし、21世紀になった今日でも残念ながら最強の刃物鋼というものは無く、それぞれに長所と短所があります。作り手が使用目的や、使用状況などを考えて最も向いていると思われる鋼材を選択してナイフ作りを始めましょう。

以下に鋼材の特徴を掲載しましたので、鋼材選びの参考にして下さい。

鋼 種                                              特    徴 硬 度
ATS-34 R.W.ラブレス氏を始め多くのナイフメーカーが使用している事からも信頼性が高く、現在カスタムナイフにもっとも多く使われているナイフ用鋼材。その最たる理由は最もトータルバランスに優れているからでありオールパーパス向きと言える。
当工房ではバランスの良さから一押しの素材です。日立金属製
HRC60~61
440-C 古くから使われており信頼性は高い。高クロムで錆に強く砥ぎやすい。価格的にも経済的で加工も容易。 HRC58~60
CV-134 非常にタフな材料で、耐摩耗性が著しく高いため刃持ちが良く、一度研ぐとたまにタッチアップする程度で長期間長切れします。摩耗に強いので逆に言うと加工が困難と言えますが、ミラー仕上げにすると曇りのない非常に綺麗な面が得られます。少し錆びやすいので熱処理前の防錆には特に注意してください。刃付けはダイヤモンド砥石を推奨 HRC62~63
CRMO-7 クロモセブンと読みます。安全カミソリ用として開発された鋼種の改良版。加工が容易なので初心者向きとも言えるが、著しく錆に強く通常の使用ではまず錆びないので、特に海釣り等錆びやすい環境下で使用するナイフに最適。
熱処理時の焼き戻し温度が低いので、ヒルト等の取り付けは銀ロー付けよりも接着剤の使用がお勧め。
HRC58.5
HMS-67 著しく靭性が高い。高クロム、モリブデン含有で錆に強く、研ぎやすい。表面仕上げが容易で他鋼種と比べミラー仕上げに最適。加工性も良い材料であるが、粘り強いので穴あけの時にドリルが噛みやすいので注意 HRC59
銀紙1号 日立金属が刃物用として開発した伝統あるヤスキハガネ。青紙や白紙等の炭素鋼と混同しがちですが、ステンレス系の鋼材です。錆に強く砥ぎやすい HRC59~61
V金10号 靭性が高く、加工性も良い武生特殊鋼材製のステンレス。アメリカではVG-10と呼ばれ人気がある材料。耐摩耗性の良い材料ですが、その割に研ぎやすいため使いやすい。冷間圧延時の薄い酸化被膜(黒皮)が付いています。また、メーカー切断時に多少の反りが見られる場合がありますので、予めご了承ください HRC60~61
D-2
(ディーツー)
冷間金型鋼(ダイス鋼)。熱処理によるゆがみが少なく信頼性は高い。 ステンレスではないので錆びますが、ステンレスには無い切れ味が魅力。 D-2はアメリカの規格でJIS規格のSKD-11と同種。 HRC59~60
O-1    (オーワン)  ランドール社が使用しているアメリカ規格の炭素工具鋼。炭素鋼系なので錆びますが靭性も高いのでストック&リムーバルで製作しても粘りのある炭素鋼の刃物を作ることができます。 HRC60~61